明治から昭和にかけて活躍した小説家、歌人である岡本かの子の随筆。初出発表誌未詳。のちに創作集「鮨」[改造社、1941(昭和16)年]に収録された。北大路魯山人(本名・福田房次郎)をモデルにした作品。名僧の子として生まれながらも、母子で寺を追われ辛苦を嘗める鼈四郎。屈折した情熱と美貌を武器として琴棋書画界、さらに料理の世界へと伸してゆく。息をつかせぬ展開と個性的な人々もさることながら、蔬菜から京の伝統食、臨終の床の親友にふるまわれる美食に至るまで全篇に盛り込まれる料理の描写と味覚の生々しさが一番の読みどころと言えよう。
明治から昭和にかけて活躍した小説家、歌人である岡本かの子の随筆。初出発表誌未詳。のちに創作集「鮨」[改造社、1941(昭和16)年]に収録された。北大路魯山人(本名・福田房次郎)をモデルにした作品。名僧の子として生まれながらも、母子で寺を追われ辛苦を嘗める鼈四郎。屈折した情熱と美貌を武器として琴棋書画界、さらに料理の世界へと伸してゆく。息をつかせぬ展開と個性的な人々もさることながら、蔬菜から京の伝統食、臨終の床の親友にふるまわれる美食に至るまで全篇に盛り込まれる料理の描写と味覚の生々しさが一番の読みどころと言えよう。